2017年08月21日

生命は

[心(実存)]

詩人吉野弘さんがお亡くなりなった年、

直接、奥様からこの詩集を

いただける幸運を得ました。

 

恥ずかしながら、

その時、

私は、

著名な詩人吉野弘を

知らなかったのです。

 

2007年から富士市にお住まいに

なってたんですね。

 

でも、ずっと大切にしていました。

 

お気に入りの一つを…

 

「生命は」

 

生命は

自分自身だけでは完結

できないように

つくられているらしい

花も

めしべとおしべが

揃っているだけでは

不充分で

虫や風が訪れて

めしべとおしべを

仲立ちする

 

生命は

その中に欠如を抱き

それを他者から満たして

もらうのだ

 

世界は多分

他者の総和

しかし

互いに

欠如を満たすなどとは

知りもせず

知らされもせず

 

ばらまかれている者同士

無関心でいられる間柄

ときに

うとましく思うことさえも

許されている間柄

そのように

世界がゆるやかに

構成されているのは

なぜ?

 

花が咲いている

すぐ近くまで

虻の姿をした他者が

光をまとって

飛んできている

 

わたしも あるとき

誰かのための虻だったろう

 

あなたも あるとき

私のための

風だったかもしれない